「あまのじゃくさん」の中にいる、本当は見てほしい子ども
──不器用さんのたちの表現のかたち、みんな安心求めている──
■ はじめに
いつもありがとうございます。
こどもプログラミング教室「すまいる・キッズ」のとどちゃんです。
今回ご紹介するのは、教室に何人かいる「あまのじゃくさん」たちのお話です。
どの子も表現の仕方は少しずつ違いますが、共通しているのは、
「自分を見てほしい」「がんばりたいけど、うまく出せない」という気持ちを、
ちょっと不器用なかたちで伝えているということ。
そんな子どもたちの姿から、私自身もたくさん学ばせてもらっています。
■ “今日はやらない!”から始まる日
当教室の高学年クラスでは、どのレッスンでもまずタイピング練習から始まります。
「さぁ始めるよ~、『よろしくお願いします』」
「じゃあまずは、タイピングから」
そんな掛け声でレッスンがスタートする中、
自分の机で落ち着かず、もぞもぞしている子がいます。
「タイピングやろうか?」と声をかけると、すかさず返ってきたのは…
「今日はやらない!タイピングやらなくても大丈夫!」
「今日はそんなモードなんですね」と、
私は心の中でつぶやきながら、
「そうやなぁ、まぁいいかぁ」と、そのままにしておきます。
この日は“あまのじゃくモードONの日”。
何かを伝えると、反対のことや、ちょっと斜め上からの返事が返ってきます。
でも、基本的には肯定して受け止めることを大切にしています。
すると、レッスンも半ばを過ぎる頃には、
自然と自分のやるべきことに取り組み始めるんです。
すると肯定的コメントが増えてきます。
「うまくいったから見て」とか、「こんな風に工夫したい」とか
レッスンが終わってタイピング練習をしたりしてます。
明るい調子でいろいろ言ってくるけれど、
その裏にあるのは「やりたくない」ではなく、かまってほしい気持ちだったりします。
こちらが頭ごなしに否定してしまうと、子どもの心は固くなってしまいます。
だから、「そういう日もあるよね」と受け止めながら、穏やかに付き合っていく。
こどものあまのじゃく的なやり取りは、永遠には続きません。
子どもはちゃんと、自分のタイミングで動き出します。
■ 「手伝おうか?」は、難しい問いかけになることもある
何かうまくいかない様子が見えたとき。
たとえば、ブロックが外れないときなどに「手伝おうか?」と声をかけると、
即座に返ってくるのは……
「いらない!」
でもその直後、手元の動きが止まり、
同じところを何度もやり直している様子が見えることもあります。
「助けてほしい」けれど「助けられたくない」
「できる自分でいたい」けれど「できないかもが怖い」
――そんな葛藤が、行動の端々ににじみます。
私はこの「いらない」の奥にある、がんばりたい気持ちを感じています。
だから無理には手を出しません。
でも、「困ったときにはこんなふうに言ってね」と、
“助けて”の出し方を、みんなに聞こえるようにやんわりと伝えます。
そして、声をかけやすい立ち位置と雰囲気を意識して、そばにいます。
■ 「周りを頼ってもいい」という許可を、自分に出せない
「手伝おうか?」に即座に「いらない」と答える子も、
「頑固」という言葉で片づけられがちな子も、
本当は、周りを頼ってもいいんだという許可を、自分に出せていないだけなんです。
だからこそ、私たち大人ができることは、
- 小さな成功を一緒に喜ぶ
- うまくいかなかったとしても、がんばった姿を認める
- 「助けてって言ってもいいんだよ」と繰り返し伝える
- ヘルプの出し方を、何度でも教える
そんな関わりの中で、
子どもが少しずつ“自分に優しくなっていく姿”を、私は見守っています。
■ ちょっとズレた言い方で、つながろうとする
ある日、突然、こんなひと言が聞こえてきました。
「今日さぁ、学校で、すごいことがあったんだよ…」
誰に話すでもなく、教室全体に向けて発せられた言葉。
冗談めかしていて、声もちょっと大きめ。
でも、周りの子たちはあまり反応せず、空気がふっと止まりました。
その子は――そう、注目されたいのです。
みんなと仲良くなりたいのです。
でも私は、あえて反応せずにそっと見守ります。
なぜなら、本心はきっと、「つながりたい」という思いだから。
そのために、この方法は良くないと思うから
この子は、他の子が困っているとき、
とても自然に手伝ったり、教えたりしてくれます。
その子が活躍できる場面を意識して増やしていくと、
教室中に向けたアナウンスのような不思議な発言も、少しずつ減ってきました。
つながりを持てたことで、安心できるようになったのだと思います。
だから、ズレた言い方をしてしまうのは、
つながりたくて出した、不器用なSOSなのだと私は感じています。
■ 「あまのじゃくさん」は、不器用な表現のプロ
やらなさそうに見える
ふざけているように見える
助けを断っているように見える
でもその行動の奥には、
- できない自分を見せるのが怖い
- 信じてもらいたい
- かまってもらいたい
- 仲良くなりたい
そんな、まっすぐな気持ちが隠れています。
- わざと逆のことを言う
- 話をズラして注目を集める
- 助けを断りながらも、目でこちらを追ってくる
それは全部、子どもたちからの“お試し”なんだと思います。
「この人は、本当に自分のことを見てくれる?」
「安心して甘えても、笑われない?」
子どもは、言葉ではなく、行動で信頼関係を確かめているのかもしれません。
■ 大人にできることは、安心を先に渡すこと
「素直になりなさい」では、届きません。
「ふざけないで」では、心の扉は開きません。
だから私は、“安心して挑戦できる空気”を先に差し出すようにしています。
- できなかったら、途中でやめてもいい
- がんばったところを見せてくれたらいい
- 今は出来なくても 大丈夫
そんな声かけをすることもあれば、
ただそっと近くに座っているだけのこともあります。
■ ひねくれているようで、誠実な子どもたちへ
「やらない」
「無理」
「いらない」
そう言いながら、
心の中では“がんばりたい”と願っている子どもがいます。
あまのじゃくさんたちの言葉は、遠回りだけど、まっすぐです。
不器用だけど、とても誠実です。
私たち大人ができることは、
「こうさせよう」ではなく、「そう感じてるんだね」と受け止めること。
その安心の積み重ねの中で、
少しずつ、あまのじゃくさんの“本当の気持ち”が見えてきます。
ーーー
※このブログでは、現場での子どもたちの姿をありのままにお伝えしています。
心理的な用語で言えば「自己主張」「自己防衛」「関係性の探り」など、発達段階に見られる自然な姿です。
「見守る」や「肯定的な声かけ」は、すぐに真似できないこともありますが、まずは大人が安心して待てることが大事なのだと、日々感じています。
コメントをお書きください