「とどちゃん! 今日は何人! 誰来るの!」
いつも水曜日、
かれは双子の兄弟と一緒に
一番乗りで教室にやってきます。
「とどちゃん! 今日は何人! 誰来るの!」
そんなふうに聞いてくれる声から、
かれが水曜日の仲間たちのことを
どれだけ好きなのかが伝わってきます。
少し控えめなかれですが、
教室ではいつもマイペースです。
のんびり。
ゆっくり。
でも、ちゃんとかれの時間が流れています。
教室の仲間たちも、
そんなかれのことをよく分かっていて、
無理に急がせることもなく、
ほどよい距離で見守ってくれています。
そして気がつくと、
かれはみんなから自然に愛されていました。
目に見える成果が大事だと思っていた
かれが教室のメンバーになったばかりのころ、
ぼくは60分のレッスンの中で
何かひとつでも目に見える成果を出すことが、
かれの自信につながるはずだと、
思っていました。
でもね……
今振り返ると、
それはぼくの思い込みだったのだと気づきました。
少しでもできることを増やして、
少しでも前に進ませて、
「できた」という実感を持たせること。
それが成長につながるのだと、
ぼくは信じていたんです。
かれには、かれのリズムがあった
けれど、
かれにはかれのリズムがありました。
そして、
かれにはかれの呼吸があったんですね。
そのゆっくりとした歩幅に気づいて、
その子のリズムに合わせることが大切なんだと
感じるようになってから、
ぼくの関わり方も少しずつ変わっていきました。
焦らなくていい。
急がせなくていい。
止まる時間があってもいい。
休みながらでもいい。
そう思って、
かれのペースに
ぼくも一緒に合わせていくようになると、
かれの表情が少しずつ
やわらかくなっていったように感じました。
笑顔が増えて、ぼくも癒されていた
笑顔が増えたように思います。
安心した顔を見せてくれることも、
少しずつ増えていきました。
その笑顔を見るたびに、
癒されているのは
かれだけじゃなく、
むしろぼくのほうかもしれないなと思います。
かれは、自分の時間の中で進んでいきます。
ゆっくりでも、
休みながらでも、
ちゃんと前に進んでいくんです。
大人から見ると、
すぐには変化が見えにくいこともあります。
でも、その子の中では、
ちゃんと育っているものがあるのだと思います。
その子らしい歩みを信じていたい
今すぐ大きく変わらなくてもいい。
今すぐ結果が出なくてもいい。
その子らしい速さで、
その子らしい育ち方で、
少しずつ力をたくわえていけばいい。
そしていつか、
「ああ、ここまで来たんだな」と
ぐっと成長を感じるときが
きっと来るのだと思います。
ぼくはそんなふうに信じています。
かれと過ごす時間は、
ぼくにとっても
とても大切な気づきをもらえる時間です。
子どもを育てているつもりで、
ほんとうはぼくのほうが
教えてもらっているのかもしれません。
のんびりマイペース。
でも、その歩みは
その子だけの大切な歩みです。
かれとの時間は、
今日もぼくに
やさしい気づきと癒しをくれます。